慰謝料・賠償金 物損事故

10対0の怪我なし物損事故の示談金の相場|迷惑料や慰謝料はもらえない?

公開 2022.08.09 更新 2026.08.26
この記事を書いた人 弁護士 豊田 友矢 千葉県弁護士会所属 登録番号 49837
10対0の怪我なし物損事故の示談金の相場|迷惑料と慰謝料は?
目次
  1. 0110対0の物損事故でも「慰謝料」はもらえない
  2. 0210対0の物損事故でも「迷惑料」はもらえない
  3. 03加害者に直接迷惑料を請求するのもダメ|脅迫罪になることも
  4. 04加害者の方から迷惑料を渡してきたときは受け取ってよい
  5. 05物損事故扱いでも怪我で通院した場合は慰謝料がもらえる
  6. 06怪我なしの物損事故で慰謝料がもらえた裁判例
  7. 墓石が破壊された事例|慰謝料10万円
  8. ペットが死亡した事例|慰謝料5万〜40万円
  9. 自宅が破壊された事例|慰謝料50万円
  10. 極めて悪質な事故の事例|慰謝料10万円
  11. 07怪我なし物損事故の示談金の中身とは?
  12. 車両の修理費または時価額
  13. 買い替え諸費用
  14. 代車費用・レンタカー代
  15. レッカー費用
  16. 携行品(持ち物)などの修理費または時価額
  17. 評価損(格落ち損害)|請求し忘れやすい項目
  18. 08怪我なし物損事故のよくある質問
  19. 09まとめ:怪我なし物損事故の示談金に相場は一切ない

この記事の結論

  • 10対0の物損事故でも、怪我がなければ慰謝料も迷惑料ももらえません
  • 受け取れるのは壊れた物の補償だけです。修理費・買替諸費用・代車費用など6項目に分かれます。
  • 示談金に相場はありません。どれだけ価値のある物が、どれだけ壊れたかで決まります。

被害者にまったく過失のない10対0の物損事故。怪我はなく、車だけが壊れた場合、示談金はいくらになるのでしょうか。

この記事では、慰謝料や迷惑料を請求できない理由を説明します。あわせて、実際に何を請求できるのかを項目ごとに見ていきます。

10対0の物損事故でも「慰謝料」はもらえない

被害者には全く過失のない10対0の事故でも、怪我なしの物損事故であれば、慰謝料はもらえません

慰謝料とは、精神的苦痛に対する補償のことです。

事故で怪我をした場合を考えてみてください。治療費だけ補償してもらっても、痛い思いをした事実は消えません。後遺症が残ったことによる精神的苦痛も、なかったことにはなりません。だから治療費に加えて、慰謝料を請求できるのです。

ところが物損については、考え方が違います。日本の民法の解釈や裁判例では、こう考えられています。壊れた物についての補償を受ければ、精神的苦痛はなくなる、という整理です。

物損事故では、修理費や時価額が補償されます。補償される以上、お金に換算できる精神的苦痛は残りません。だから追加で慰謝料を請求できない、という整理です。

10対0の物損事故でも「迷惑料」はもらえない

慰謝料がもらえないなら、代わりに「迷惑料」は請求できないか。そう考える方もいるかもしれません。

実際、追突事故など過失割合が10対0の事故です。遭った被害者の方が「当てられ損だ」と不満を持たれるケースも多くあります。怪我をしなくとも、警察との対応や車の修理で、時間と手間がかかってしまうからです。

その分の迷惑料を加害者からもらいたい。そう考えたくなる気持ちもわかります。

ところが、結論から言うと、迷惑料というものは認められません

そもそも法的にも自動車保険実務上も、迷惑料という名前の損害項目はありません。強いて言えば、迷惑料とは迷惑したことによる精神的苦痛に対する補償です。つまり法的には「慰謝料」のことです。

先ほど説明したとおり、物損事故で慰謝料はもらえません。同じ意味である以上、迷惑料ももらえないのです。過失が全くない被害者の方であっても、結論は変わりません。

加害者に直接迷惑料を請求するのもダメ|脅迫罪になることも

物損事故なので加害者の保険会社が慰謝料を払わない。それなら被害者が直接加害者に迷惑料を請求すればよいのでは。そう考えている人もいます。

しかし、これはできません。そして、やるべきでもありません。

まず、加害者は弁護士を入れて支払いを拒んでくることが多いです。手間をかけた末に、何も得られません。

請求のしかたによっては罪に問われます

迷惑料の請求の仕方によっては、脅迫罪、恐喝罪、住居侵入罪などに該当することがあります。被害届を出され、加害者と被害者の立場が逆転する可能性もあるので注意が必要です。

加害者の方から迷惑料を渡してきたときは受け取ってよい

加害者が謝罪に来た際などに、加害者の方から数万円程度の迷惑料的な金銭を渡されることもあります。これは、単なる贈与なので、受け取っても問題ありません。

迷惑料を法的に請求できないことと、受け取ってよいかどうかは別の話です。任意に渡されたものを受け取ってはいけない、という決まりはありません。

特に多いのが、物損車両が全損扱いとなり、時価額しかもらえないケースです。修理費との差額は、被害者の自己負担になります。

事故相手がご近所さん、取引先、地域の事業者などの場合はどうでしょうか。後を引かないよう、加害者本人の負担で迷惑料を渡されることもあります。保険会社からの時価額の賠償とは別に、修理費と時価額の差額程度を負担するケースです。

物損事故扱いでも怪我で通院した場合は慰謝料がもらえる

ここまでは、怪我なしの本来の「物損事故」の話です。怪我をして通院したのに、警察では「物損事故扱い」になっている。この場合は慰謝料をもらうことができます

たまに、警察で物損事故扱いになっているから、治療費や慰謝料を請求できないのではないか。そう不安に感じている被害者の方もいます。「物損事故では慰謝料は請求できない」という説明を読んだためです。

ところが、慰謝料が請求できないのは、怪我なしの本来の物損事故の場合です。警察で物損事故扱いになっているかどうかと、治療費や慰謝料を相手が払うかどうかは関係ありません。

警察で物損事故扱いになったままでも構いません。事故で怪我をして通院した事実さえ認められれば、問題なく慰謝料を請求できます。

通院していないと請求できません

怪我をしたけれど通院はしていない、という場合は別です。そもそも怪我をしたことの証明が困難ですし、怪我の程度の証明もできません。やはり慰謝料は請求できないことになります。違和感があるなら、早めに受診してください。

怪我なしの物損事故で慰謝料がもらえた裁判例

怪我なしの物損事故では慰謝料は認められないのが原則です。ただし、例外的に慰謝料がもらえた裁判例もあります。

壊れた物 認められた慰謝料
墓石 10万円
ペット 5万円〜40万円
自宅 50万円
駐車車両(悪質な当て逃げ) 10万円

下記の裁判例を見てもらえばわかるとおり、傾向ははっきりしています。慰謝料が認められるのはペット、墓石、自宅など特別な物が損傷した場合です。通常の車同士の事故で認められるケースは、ほぼありません。

また、慰謝料が認められる例外ケースでも、その金額は10万円程度にとどまることが多いようです。

墓石が破壊された事例|慰謝料10万円

自動車事故によって墓石が倒壊し、骨壺が露出した場合に慰謝料10万円が認められた(大阪地判平12.10.12)。

ペットが死亡した事例|慰謝料5万〜40万円

自動車事故によってペットの犬が死亡した場合に、飼い主に慰謝料5万円が認められた(東京高判平16.2.26)。

事故でペットのパピヨンが死亡し、シーズーが骨折した場合に、飼い主に慰謝料10万円が認められた(大阪地判平18.3.22)。

事故でラブラドールレトリバーに後遺症が残った場合に、飼い主夫婦に慰謝料合計40万円が認められた(名古屋高判平20.9.30)。

自宅が破壊された事例|慰謝料50万円

深夜に大型トラックが民家に衝突し、屋根の落下、壁および柱等が破損した場合に、50万円の慰謝料が認められた(岡山地判平8.9.19)。

極めて悪質な事故の事例|慰謝料10万円

飲酒運転の加害者が駐車車両に衝突して当て逃げした事案です。被害者が自ら探索して加害者を見つけた場合に、慰謝料10万円が認められた(京都地判平15.2.28)。

怪我なし物損事故の示談金の中身とは?

怪我がない事故では、示談金の中身は物損のみになります。

過失割合が10対0の場合は、実際に生じた物損の100%を加害者に対して請求することができます。

物損の示談金には、具体的に次の6つがあります。

項目 内容
修理費または時価額 原則は修理費。全損なら時価額まで
買い替え諸費用 全損で買い換えるときの登録費用など
代車費用・レンタカー代 修理・買換えの間に借りた分
レッカー費用 事故車を修理工場まで運んだ費用
携行品の修理費または時価額 スマホ・衣服・腕時計などの破損
評価損(格落ち損害) 修理しても残る価値の下落分

示談金は、これらを積み上げた金額です。こちらから言わなければ計上されない項目もあるので、1つずつ確認してください。

車両の修理費または時価額

事故で被害者の車、バイク、自転車などが破損した場合は、その修理費または時価額を請求できます。

修理費を請求するのが原則です。ただし全損の場合は、時価額しか請求できません。修理費が時価額を上回る経済的全損でも同じです。

経済的全損については、経済的全損だと泣き寝入り?修理したいのに全損扱いはおかしい?の記事で解説しています。

買い替え諸費用

事故で破損した車やバイクなどが全損になり、買い換える場合です。各種の買い替え諸費用を、加害者に対して請求できます。

買い替え諸費用については、交通事故で全損になった場合には買替諸費用も請求できるの記事で解説しています。

代車費用・レンタカー代

車を修理する間、または買換える間に、代車やレンタカーを借りたときの費用です。

代車費用については、事故の代車・レンタカー費用は相手に請求可能|10対0や9対1の過失割合の場合は?の記事で解説しています。

レッカー費用

事故車両を修理工場等まで運ぶ際のレッカー費用です。

被害者が自動車保険に加入している場合です。とりあえず自分の保険のレッカー費用特約などを利用するケースも多くあります。

携行品(持ち物)などの修理費または時価額

スマホや衣服、腕時計など身につけていたものが、事故で破損することがあります。この場合も、破損した物の修理費または時価額を請求することができます。

持ち物の損害については、交通事故で携帯・スマホなどの持ち物が破損した場合の請求方法の記事で解説しています。

評価損(格落ち損害)|請求し忘れやすい項目

修理をしても、事故車という履歴は残ります。そのぶん下がった車の価値が評価損です。格落ち損害ともいいます。

保険会社の提示に、はじめから評価損が入っていることはまずありません。被害者から主張しなければ、そのまま示談になります。

認められやすいのは、初度登録から年数が浅い車、走行距離が短い車、車体の骨格部分を修理した車です。逆に、古い車や軽微な傷では認められにくくなります。

怪我なし物損事故のよくある質問

10対0でぶつけられました。いくらもらえますか。
怪我がなければ、壊れた物の補償だけです。修理費・買い替え諸費用・代車費用・レッカー費用・携行品の損害・評価損を積み上げた金額になります。決まった相場はありません。軽い傷なら10万円程度、高級外車が全損なら数千万円になることもあります。
迷惑料の相場はいくらですか。
相場という以前に、請求できる項目ではありません。法的にも自動車保険実務上も、迷惑料という損害項目が存在しないためです。ただし、加害者が任意に渡してきた場合は、贈与として受け取って構いません。
事故のあとから痛みが出てきました。今からでも間に合いますか。
できるだけ早く受診してください。事故から日が空くほど、事故と怪我の関係を認めてもらいにくくなります。警察で物損事故として処理されていても、通院した事実があれば慰謝料を請求できます。

まとめ:怪我なし物損事故の示談金に相場は一切ない

示談金の相場というものが想定できるのは、怪我をした場合の慰謝料についてのみです。

例えば、過失10対0の事故でむちうちの怪我をした場合です。この慰謝料については、通院期間からある程度の相場があるといえます。詳しくは過失割合10対0の示談金の相場は?【むちうち編】で解説しています。

他方で、これまで説明したとおり、物損事故では慰謝料や迷惑料は認められません。怪我がない物損事故の示談金に、相場というものは存在しないのです。

物損の内、もっとも高額になるのは通常は車両の修理費または時価額です。しかし、その幅は極端に広くなります。

壊れた車 損害の規模
普通の車に傷がついただけ 10万円程度のことも
高級外車が全損 数千万円が認められることも

要するに、物損事故の示談金には相場というものは一切ありません。どれくらい価値のある物が、どれだけ壊れたか。それだけで決まります。同じ10対0の事故であっても、示談金の額はピンキリとなります。

だからこそ、請求できる項目を落とさないことが金額を左右します。提示された内容に疑問があれば、一度ご相談ください。当事務所では相談料をいただいておりません。

執筆者

代表弁護士 豊田 友矢

千葉県弁護士会所属 登録番号 49837

全ての案件を、代表弁護士の豊田が担当します。交通事故の被害者側に特化しています。私も事故の被害に遭った経験があるので、事故被害者の話を真面目に聞きます。安心してご相談ください。

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