死亡・重大事故

交通事故の葬儀費用は150万円まで請求できる|自賠責60万円との違い

公開 2022.01.27 更新 2026.08.26
この記事を書いた人 弁護士 豊田 友矢 千葉県弁護士会所属 登録番号 49837
死亡事故の葬儀費用はどうなる?自賠責と裁判基準
目次
  1. 01相手に請求できる葬儀費用には何が含まれるのか?
  2. 02負担した葬儀費用はいくらまで相手に請求できるのか?
  3. 自賠責基準の葬儀費用は60万円
  4. 任意保険基準の葬儀費用は60万円程度
  5. 赤い本基準(裁判基準・弁護士基準)の葬儀費用は150万円
  6. 例外的に150万円より高額な葬儀費用が認められた裁判例
  7. 03誰が負担した葬儀費用を請求できるのか?
  8. 04葬儀費用のよくある質問
  9. 05葬儀費用を請求する際は弁護士に相談を

この記事の結論

  • 葬儀費用は赤い本基準で150万円まで相手に請求できます。
  • 保険会社の提示は自賠責基準の60万円~100万円程度が多く、応じると50~90万円の差が出ます。
  • 実際に支出した額が150万円未満なら、支出した額までです。領収書の保管が必要です。
  • 香典返しは請求できませんが、受け取った香典を損害から差し引く必要もありません。

交通事故に遭って被害者が死亡してしまった場合、被害者遺族は葬儀費用を負担することになります。

それでは、被害者の遺族は負担した葬儀費用を、加害者及び保険会社に対して請求できるのでしょうか。請求できるとしても、いくらまでなら認められるのでしょうか。

また、葬儀費用と一口に言っても、さまざまな項目があります。どの範囲なら相手に請求できるのでしょうか。

この記事では、死亡事故の被害者遺族が葬儀費用を請求するために必要な知識について解説します。

相手に請求できる葬儀費用には何が含まれるのか?

相手に請求できる葬儀費用とは、一般的に次のものをいいます。通夜や告別式に必要な費用、四十九日の法要までにかかる費用、埋葬にかかる費用等です。

請求できる 請求できない
  • 遺体搬送料・遺体処置費
  • 花代
  • 葬儀業者に支払った費用
  • お布施・読経・戒名料
  • 火葬費用
  • 仏壇・仏具購入費
  • 墓石代
  • 香典返し
  • 通夜・告別式の参列者への接待費用
  • 四十九日より後の法要費用

なお、香典返しは損害とは認められません。その代わりにもらった香典分は、損害から差し引かなくてよいことになっています。

同様に、通夜・告別式に参列した方への接待費用も、原則として損害とは認められません。

領収書が出ない費用について

お布施・読経・戒名料は、領収書が発行されないことがあります。支払った日・支払先・金額を記録に残しておいてください。葬儀社の見積書や請求明細に記載があれば、それも資料になります。

負担した葬儀費用はいくらまで相手に請求できるのか?

どの基準で計算するかによって、認められる金額は大きく変わります。

基準 葬儀費用の上限 使われる場面
自賠責基準 60万円(資料次第で100万円まで) 自賠責保険への請求
任意保険基準 60万円程度 保険会社からの提示
赤い本基準(裁判基準・弁護士基準) 150万円 裁判・弁護士による交渉

保険会社が最初に提示してくるのは、自賠責基準とほぼ同じ60万円程度です。弁護士が交渉すれば150万円まで引き上げられる可能性があり、その差は90万円になります。

自賠責基準の葬儀費用は60万円

自賠責保険の基準では、葬儀費用は、原則として60万円が認められることになっています。ただし、資料から60万円を超えることが明らかな場合です。総額100万円の範囲内で増額されることもあります。

自賠責には全体の上限があります

自賠責保険では、死亡事故の場合に上限が決まっています。葬儀費用の他に治療費、慰謝料などの全ての損害をあわせて、3,000万円までです。葬儀費用以外で上限額に達している場合には、別途葬儀費用は請求できません。

任意保険基準の葬儀費用は60万円程度

任意保険基準とは、そのような基準が公表されているわけではありません。弁護士をいれない場合に、任意保険会社が提示してくる賠償額の相場を意味します。

葬儀費用については、基本的に、自賠責基準と同様の金額で提示されることが多いです。実際に150万円を支出していても、そのままでは60万円しか支払われません。

赤い本基準(裁判基準・弁護士基準)の葬儀費用は150万円

赤い本基準(裁判基準・弁護士基準ともいう)では、葬儀費用は、原則として150万円が認められています。

ただし、実際に支出した額が150万円よりも少ない場合です。この場合は、実際に支出した金額しか認められません。

逆に、実際に支出した金額が150万円を超えた場合です。原則として、150万円しか加害者には請求できません。

実際に支出した額 請求できる額
100万円 100万円(実費まで)
150万円 150万円
200万円 150万円(原則として上限)

つまり150万円は上限であって、自動的に受け取れる金額ではありません。実際に支出した額を証明する必要があるため、葬儀社の見積書と領収書は必ず保管してください。

下記のように、例外的に150万円を超える葬儀費用を認めた裁判例もあります。ただし、認められる件数はかなり少ないのが現状です。

例外的に150万円より高額な葬儀費用が認められた裁判例

①葬儀費用200万円を認めた事例

事情:事故にあった単身赴任先と地元で2回葬儀を行った。

②葬儀費用250万円を認めた事例

事情:警察協力殉職者と扱われ、相応の葬儀を営む必要があり、500万円以上の葬儀費用を支出した。

③通常の葬儀費用以外に別項目で追加の損害を認めた事例

前記のとおり、150万円の枠内の葬儀費用には様々な項目が含まれています。しかし、それとは別に認めた裁判例があります。150万円の通常の葬儀費用に加えて、仏壇・仏具購入費、墓石購入費、遺体搬送料、遺体処置費等を別途認めたものです。

これらの費用について、様々な事情により、通常よりも多額の支出がなされていた事案です。別途損害として認めないと遺族にあまりに酷である、と考えられたためです。

誰が負担した葬儀費用を請求できるのか?

葬儀費用を誰が請求するかについては、二通りの方法が考えられます。

請求のしかた 誰が受け取るか 使う場面
亡くなった方の損害として計上する 各相続人が自己の相続分に応じて 相続財産から支出した場合
支出した相続人固有の損害とする 支出した人が全額 喪主が自分の負担で支出した場合

一つ目は、交通事故で亡くなった方の損害として計上する方法です。それを各々の相続人が、自己の相続分に応じて請求します。

二つ目は、実際に葬儀費用を支出した相続人が請求する方法です。自己の固有の損害として、葬儀費用の全額を請求します。

どちらの方法で請求することもできます。ただし喪主が自分の負担で葬儀費用を支出した場合は、二つ目の方法で請求することが多いです。葬儀費用を支出した人だけが賠償を受けるべきである、という常識に沿うためです。

逆に、相続財産から支出したと考えられるような場合には、一つ目の方法で請求することが多いです。

相続人が複数いる場合は先に決めておく

どちらの方法で請求するかによって、誰がいくら受け取るかが変わります。示談の成立後に相続人の間で揉めることがあります。請求する前に方針を決めておいてください。

葬儀費用のよくある質問

保険会社から60万円と言われました。増額できますか。
実際に支出した額が60万円を超えているなら、増額を求める余地があります。赤い本基準では150万円が上限とされているため、その範囲で実費を主張します。増額を求めるには、見積書・領収書など支出を示す資料が必要です。
葬儀費用が150万円に届きませんでした。差額はもらえますか。
受け取れません。150万円は上限であり、実際に支出した額までしか認められないためです。100万円の支出であれば、請求できるのは100万円です。
香典を受け取った分は差し引かれますか。
差し引かれません。香典返しを損害として請求できない代わりに、受け取った香典も損害から控除しない扱いになっています。保険会社から控除を求められた場合は、争う余地があります。
四十九日より後の法要の費用は請求できますか。
原則として認められません。葬儀費用として扱われるのは、四十九日の法要までにかかった費用です。一周忌以降の費用は対象外となります。

葬儀費用を請求する際は弁護士に相談を

このように、ご遺族が葬儀費用を加害者に請求する際には、ケースバイケースの判断が必要になります。何が葬儀費用に含まれるのか、いくらまで請求できるのか、誰が請求するのか。いずれも事案ごとに変わります。

保険会社の提示をそのまま受け入れると、本来の金額との差が90万円になることもあります。

適正な賠償を受けるためにも、相続人間の公平を守るためにも同じです。死亡事故のご遺族が葬儀費用を請求する際には、事前に弁護士にご相談いただければと思います。

当事務所では、死亡事故のご遺族からのご相談は、相談料無料で承っております。相談だけで解決することもございますのでお気軽にご相談ください。

執筆者

代表弁護士 豊田 友矢

千葉県弁護士会所属 登録番号 49837

全ての案件を、代表弁護士の豊田が担当します。交通事故の被害者側に特化しています。私も事故の被害に遭った経験があるので、事故被害者の話を真面目に聞きます。安心してご相談ください。

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