このページの要点
- 人身傷害保険と相手方の賠償金は、両方受け取れることがあります
- 過失で減額された分を取り戻せる仕組みです
- そのためには、訴訟が必要になるのが通例です
ご自身にも過失がある事故では、相手方の保険会社が治療費を払わないことがあります。その場合、ご自身が加入している人身傷害保険を使うことになります。
ここで多くの方が誤解しています。人身傷害保険を使うと、相手方からは何も取れなくなる。そう思われがちです。
実際には違います。両方を受け取れます。重い後遺障害が残る事案では、その差が数百万円から数千万円になることもあります。
人身傷害保険とは
ご自身やご家族が加入している任意保険に付いている補償です。
最大の特徴は、ご自身の過失にかかわらず、契約した金額の範囲で支払われることです。過失相殺による減額を受けません。
相手方への賠償請求では、過失の分だけ減額されます。人身傷害保険には、その制約がありません。
相手方からも、あわせて受け取れます
裁判基準の損害額が1,000万円、ご自身の過失が30%の事案で考えます。
| 人身傷害から | 相手方から | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 相手方に請求するだけ | — | 700万円 | 700万円 |
| 人身傷害と併用 | 800万円 | 200万円 | 1,000万円 |
| 差 | +300万円 |
※ 人身傷害の約款基準による損害額を800万円と仮定した場合の計算例です。
過失で減らされた300万円が、そのまま戻ってきています。過失がなかった場合と同じ金額です。
最高裁が認めた考え方です
保険会社が保険金を払うと、その分だけ相手方への請求権が保険会社に移ります。これを代位といいます。
では、どこまで移るのか。ここが争われました。
最高裁は平成24年2月20日に判断を示しました。被害者が裁判基準の損害額を確保できるように解釈すべきだ、という内容です。
保険会社が代位できるのは、被害者が裁判基準の全額を受け取ってなお余る部分だけです。被害者の取り分が優先されます。
なぜ訴訟が必要になるのか
保険会社は、約款の基準で計算します
人身傷害保険の保険金は、約款で定められた独自の基準で算定されます。
この基準は、裁判基準より低く設定されているのが通常です。上の例で1,000万円ではなく800万円になっているのは、そのためです。
示談で終わらせると、差額は戻りません
先に示談してしまうと、取り戻せなくなります
現在の約款には、判決や裁判上の和解で損害額が認定された場合には、その金額を損害額とするという規定があります。裏を返せば、裁判外の示談で終わらせた場合は、約款の基準のままです。差額を受け取れません。
これが、訴訟提起が必要になるのが通例といわれる理由です。
保険会社が意地悪をしているわけではありません。約款がそう組まれているためです。
使う順番で、結果が変わることがあります
先に人身傷害を使う場合
人身傷害保険を先に受け取り、その後に相手方へ請求します。
この場合、最高裁の考え方により、合計で裁判基準の全額を確保できます。
先に相手方と示談してしまった場合
相手方から過失相殺後の金額を受け取った後に、人身傷害保険を請求する形です。
この場合、訴訟で損害額が認定されていなければ、約款の基準で計算されます。裁判基準との差額は受け取れません。
示談書に署名する前にご相談ください
相手方の保険会社から示談の提示を受けている段階であれば、まだ選べます。署名してしまうと、選択肢がなくなります。ご自身やご家族の保険に人身傷害保険が付いているかどうか、まず保険証券をご確認ください。
誤解されやすい点
使っても、翌年の等級は下がりません
人身傷害保険は、等級に影響しない扱いになっているのが一般的です。
ただし、車両保険などを同時に使えば下がります。契約内容によるため、保険証券や代理店にご確認ください。
弁護士費用特約と併用できます
同じ保険に弁護士費用特約が付いていることがあります。
人身傷害保険を使いながら、弁護士費用特約も使えます。訴訟に進んだ場合も対象です。
相手方が無保険の場合は、扱いが異なります
相手方が任意保険に入っていないために人身傷害保険を使うケースもあります。
この場合は、相手方本人からの回収という別の問題が出てきます。
- 無保険事故への対応
相手方が保険に入っていない場合の進め方です
弁護士に依頼すると、何が変わるか
人身傷害保険が関わる事案では、次の対応を行います。
- ご契約の内容を確認し、併用できるかどうかの見極め
- 人身傷害を先に使うか、賠償請求を先に進めるかの判断
- 裁判基準での損害額の算定
- 訴訟の提起と、判決または裁判上の和解までの遂行
- 弁護士費用特約が使えるかどうかの確認
この分野は、弁護士の間でも扱いに差が出ます。仕組みを知らなければ、そもそも併用という選択肢が浮かびません。
重い後遺障害が残った事案ほど、差は大きくなります。
弁護士費用について
ご相談は無料です。
人身傷害保険をすでに使っている方からのご相談も承ります。示談が成立する前であれば、まだ間に合います。
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費用倒れにならない仕組みをご説明しています
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