このページの要点
- 過失割合が1割違うと、賠償金は数十万円単位で変わります
- 判断のもとになる基準書が、2026年3月に11年ぶりに改訂されました
- 保険会社の提示は基本の割合だけのことがあります

交通事故は、どちらか片方だけが責任を負うとは限りません。お互いにいくらかの過失がある事故が数多くあります。
そこで、それぞれの責任の割合を決めることになります。これが過失割合です。この点は、お互いの主張が大きく対立しやすい部分です。
過失割合とは
過失割合とは、事故についての当事者の責任の割合です。20対80のような比率で表します。
賠償金は、この割合に応じて減額されます。これを過失相殺といいます。
減額されるのは一部の項目ではありません。治療費、慰謝料、休業損害、逸失利益のすべてから引かれます。
過失割合が1割違うと、いくら変わるか
総損害額が500万円の事故を例にします。
| ご自身の過失 | 受け取れる金額 | 過失0との差 |
|---|---|---|
| 0% | 500万円 | — |
| 10% | 450万円 | −50万円 |
| 20% | 400万円 | −100万円 |
| 30% | 350万円 | −150万円 |
※ 過失相殺のみを反映した単純計算です。実際には既払金の精算などがあります。
1割の差が50万円です。後遺障害が残る事案なら、総損害額はさらに大きくなります。
慰謝料を数十万円上げる交渉より、過失割合を1割動かすほうが効くことがあります。
過失割合の決まり方
目安になるのは、過去の裁判例です。実際の事故と似た事案でどう判断されたかが基準になります。
実務では、東京地裁の裁判官がまとめた書籍が使われます。
『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ)です。事故の態様ごとに、基本となる割合と、それを修正する要素が示されています。
裁判所も保険会社もこの本を使います。交渉の場では「判タの何番」という形で話が進みます。
2026年3月に、11年ぶりの改訂がありました
最新版は別冊判例タイムズ39号〔全訂6版〕です。2026年3月30日に刊行されました。
これまで使われていた38号〔全訂5版〕は2014年の刊行です。改訂は約11年ぶりになります。
主な変更点は次のとおりです。
- 自転車同士の事故が、新たに56類型として整理された
- 四輪車同士、単車、自転車、駐車場内に、合計22類型が追加された
- 修正要素の「高齢者」が、おおむね65歳以上から70歳以上に変更された
ご高齢の方の事故では、注意が必要です
高齢者にあたると、歩行者や自転車の過失が5〜10%ほど有利に修正されます。その対象年齢が70歳以上に引き上げられました。65歳から69歳の方には不利な変更です。もっとも、もともと過失がゼロの事案には影響しません。
- 自転車事故の賠償請求
自転車同士の事故が新たに類型化されました
保険会社の提示に疑問を感じたら
基本の割合しか反映されていないことがあります
この本には、基本となる割合と、それを修正する要素の両方が載っています。
保険会社の提示は、基本の割合だけのことがあります。修正要素をこちらから主張しなければ、反映されません。
修正要素には、速度違反、脇見、著しい過失、道路の形状などがあります。
この本に載っていない事故もあります
すべての事故類型が網羅されているわけではありません。
載っていない事故では、保険会社が独自の検討結果で提示してきます。妥当かどうかは、似た裁判例を探して検討するしかありません。
過失がゼロだと、ご自身の保険会社は交渉してくれません
見落とされやすい点です。
ご自身に過失がまったくない事故では、加入している保険会社は示談を代行できません。支払う立場にないため、代理人になれないからです。
つまり、相手の保険会社とご自身で交渉することになります。過失がゼロの事故こそ、弁護士が必要になります。

弁護士に依頼すると、何が変わるか
事故の状況に争いがある場合
信号の色、双方の速度、現場の状況。これらで主張が食い違うことがあります。
この場合、まずご自身の説明が正しいことを示す必要があります。
使える資料には、実況見分調書、ドライブレコーダー、信号のサイクル表などがあります。取り寄せには手間がかかり、手続きも決まっています。
どの資料が必要かの判断も簡単ではありません。車の損傷状況や事故前後の動きから、どちらの説明が自然かを組み立てます。
法的な評価だけに争いがある場合
事故の状況に争いがなく、当てはめだけが問題になることもあります。
この場合は、基準書を見直したうえで、有利な裁判例を探し出します。見つけた裁判例を示して相手を説得します。
膨大な裁判例から必要なものを探すのは、個人では困難です。検索の手がかりを持っているかどうかが差になります。
交渉がまとまらない場合
資料を示しても合意できないときは、訴訟や紛争処理センターの利用を検討します。
依頼を受けていれば、そのまま代理人として手続きを進めます。
- 裁判・紛争処理センターの利用
交渉がまとまらない場合の進め方です
過失分を、ご自身の保険で埋められることがあります
過失割合が動かせない場合でも、方法があります。
ご自身やご家族の任意保険に、人身傷害保険が付いていることがあります。その場合、過失で減額された分を受け取れることがあります。
使う順番によって、手元に残る金額が変わります。先に使うか、示談の後に使うかで差が出ます。
- 人身傷害保険の増額請求
使う順番で金額が変わる仕組みです
弁護士費用について
ご相談は無料です。
過失があっても、弁護士費用特約は使えます。ご自身に過失がある事故でも対象です。
特約が付いていれば、弁護士費用の自己負担なくご依頼いただけます。
- 弁護士費用特約について
ご自身やご家族の保険に付いているか確認できます - 弁護士費用
費用倒れにならない仕組みをご説明しています
関連するページ
- 人身傷害保険の増額請求
過失分を埋められることがあります - 裁判・紛争処理センターの利用
交渉がまとまらない場合の進め方です - 慰謝料・示談金の増額交渉
総損害額そのものを上げる交渉です - 解決事例
実際に扱った事案を掲載しています
