このページの要点
- 打ち切りの連絡は、治療をやめる合図ではありません
- 治療の必要性を決めるのは、保険会社ではなく主治医です
- 打ち切りは慰謝料と後遺障害等級にも影響します

「今月末で治療費を打ち切ります」。保険会社からそう告げられて、このページを開いた方が多いと思います。
打ち切りの連絡は、あくまで「これ以上は立て替えません」という通知です。治療を終える時期を決めるものではありません。ただし、何もしないまま通い続けると、その分を回収できないことがあります。打診を受けた直後の対応で、その後の賠償額が変わります。
打ち切りを打診されたら、まず行う3つのこと
順番も大切です。上から順に行ってください。
1 その場で返事をしない
電話口で「わかりました」と答えないでください。
後になって「被害者も納得していた」と主張されることがあります。
「主治医に確認してから返答します」と伝えれば十分です。その場で結論を出す義務はありません。
2 主治医に、治療の必要性を確認する
症状固定かどうかを判断できるのは主治医だけです。診察のときに、次の2点を聞いてください。
- まだ良くなる余地があるか
- あとどのくらい治療が必要か
ここで最も多い失敗は、痛みを我慢して「良くなりました」と答えてしまうことです。
医師は患者の訴えをもとに判断します。残っている症状は、そのまま伝えてください。治療を続けたいという意思も、はっきり口にして構いません。
3 通院を止めない
最も損をする対応です
打ち切りの連絡を受けて、通院までやめてしまう方がいます。通院の実績が途切れると、後から治療費を請求しにくくなります。後遺障害等級の認定でも不利に働きます。
健康保険に切り替えれば、自己負担3割で通院を続けられます。方法は後ほど説明します。
治療費の打ち切りとは何か
治療費は本来、自分で払って後から相手方に請求するものです。
しかし実際には、相手方の保険会社が病院へ直接払うことがほとんどです。これを一括対応(一括払い)と呼びます。打ち切りとは、この一括対応をやめることです。
大切なのは、一括対応が保険会社の義務ではない点です。サービスとして行っているため、一方的にやめられます。
裏を返せば、打ち切りは支払いを抑えたい側の暫定的な判断にすぎません。賠償額が確定したわけではありません。
打ち切りを打診される時期の目安
実際に扱った事案での実感は、次のとおりです。
| 傷病(診断名) | 打診されるまでの期間 |
|---|---|
| むちうち頚椎捻挫・腰椎捻挫 | 2週間 〜 6か月 |
| 骨折 | 4か月 〜 1年 |
※ 実際に取り扱った事案での実感です。個々の事案により異なります。
注目していただきたいのは、幅の広さです。
「むちうちは3か月が目安」と書くサイトは数多くあります。しかし実際は、そのとおりになりません。早い場合は2週間で打診されます。
早期に打診されやすいのは、次のような事案です。
- 通院の頻度が低い
- 事故から初診までの間隔が空いている
- 車両の損傷が軽微である
逆に症状が重く、通院の実績が積み上がっていれば、6か月を超えることもあります。
つまり、時期は目安であって基準ではありません。「3か月が普通です」と言われても、根拠のある期限ではありません。
- むちうちの後遺症対応
最も打ち切られやすいけがです
打ち切りは、慰謝料と後遺障害等級にも影響します
打ち切りの時期は、賠償金の総額に直接ひびきます。理由は2つあります。
入通院慰謝料が下がる
入通院慰謝料は、治療期間と通院日数をもとに計算します。
治療期間が短くなれば、慰謝料もその分だけ下がります。打ち切りを受け入れることは、慰謝料を自ら削ることを意味します。
後遺障害等級が取れなくなる
後遺障害等級の認定では、治療期間6か月が一つの目安です。
むちうちで14級を目指す場合、3か月で終えると申請自体が難しくなります。
等級が認定されるかどうかで、賠償額は大きく変わります。
- 慰謝料・示談金の増額交渉
治療期間が慰謝料に直結する仕組みです - 後遺障害等級認定サポート
認定に向けて治療中からできることがあります

打ち切り後も治療を続ける3つの方法
治療費が打ち切られても、通院を続ける手段はあります。
| 方法 | 自己負担 | 使える場面 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 3割 | 労災保険適用外の事故 |
| 労災保険 | なし | 通勤中・業務中の事故 |
| 人身傷害保険 | なし | ご自身やご家族の契約に付帯している場合 |
健康保険に切り替える
交通事故でも健康保険は使えます。「使えない」というのは誤解です。
病院の窓口で断られることがあります。その場合は、加入している健康保険組合にご相談ください。
あわせて「第三者行為による傷病届」を提出します。加害者が原因で治療を受けたことを届け出る手続きです。
労災保険を使う
通勤中や業務中の事故であれば、労災保険が使えます。
利点は2つあります。自己負担がないことと、過失割合で減らされないことです。
会社に迷惑がかかると考えて、ためらう方が多くいます。労災は労働者の権利です。使って構いません。
ご自身の人身傷害保険を使う
ご自身やご家族の任意保険に、人身傷害保険が付いていることがあります。その場合、そちらから治療費が出ます。
契約によりますが、使っても翌年の等級が下がらないことが多い保険です。まずは保険証券をご確認ください。
- 人身傷害保険の増額請求
ご自身の保険を使うときの注意点です
打ち切り後の治療費を、後から認めさせるには
自費で払った治療費を、後から請求すること自体はできます。問題は、それが認められるかどうかです。
保険会社は因果関係がないと判断したうえで打ち切っています。「払ってください」と伝えるだけでは、まず通りません。
必要なのは、次の2点を医療記録で裏づけることです。
- 事故と症状との間に因果関係があること
- 打ち切りの時点で、まだ症状固定に達していなかったこと
根拠になるのは、カルテ、施術録、画像、診断書です。
決め手は、症状の推移が記録に残っているかどうかです
カルテに「変わりなし」とだけ並ぶと、症状が固定していたと読まれかねません。診察のたびに、どこがどう痛むのかを具体的に伝えてください。日常生活で何ができないのかも伝えると、記録として残ります。
自己判断で通院を中断しない
良くなったと感じて治療を終え、後から再開したいという方がいます。
この場合、再開後の治療費を認めさせるのはかなり困難です。
けがの症状は事故直後が最も重く、時間とともに改善すると考えられています。そのため、治療を終えた時点で改善したとみなされます。その後の悪化は、事故との因果関係を疑われます。
治療を終えた週が、たまたま調子の良い週だっただけでも同じです。少し楽になっても、自己判断で止めないでください。主治医に相談し、1〜2週間は様子を見ることをおすすめします。
症状固定の後はどうなるか
症状固定後の治療費は、原則として認められません。
症状固定とは、これ以上治療しても改善が見込めない状態です。その先の治療には必要性がないと考えられます。
ただし、悪化を防ぐために治療が必要と認められる場合もあります。判断が難しいため、弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すると、何が変わるか

打ち切りを延長できる可能性と対策についてアドバイスします。
保険会社は、訴訟になった場合の見通しを踏まえて対応を決めます。医学的な裏づけをそろえて主張されれば、無理に打ち切りにくくなります。
治療費の打ち切りについて、次の対応を行います。
- 打ち切り後も治療を続けるべき事案かどうかの見立て
- 主治医への意見のもらい方
- 保険会社への対応の仕方
- 健康保険・労災保険・人身傷害保険のどれを使うかの助言
- 打ち切り後の治療費の請求について
すでに症状固定に至っている場合は、方針を切り替えます。後遺障害等級の申請に進み、慰謝料と逸失利益を請求します。
ご相談は無料です。弁護士費用特約が付いていれば、自己負担なくご依頼いただけます。
- 弁護士費用特約について
ご自身やご家族の保険に付いているか確認できます - 弁護士費用
費用倒れにならない仕組みをご説明しています
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